<Web時代の写真館営業戦略とは③>

■手段は便利になった・・・そのあとは?

さて、ここで再び写真館のホームページの話に戻ります。

 

当社でいろいろリサーチしてみますと写真館の場合、戦略も無くただやみくもに店舗HPを作成してもアクセスが伸び悩む場合が多いようです。サイト閲覧者が少ないわけですから集客・収入にも結びつかず、HP運営もおろそかになりがちで、悪循環の元にもなりかねないってパターンがとても多い。
また、もともと写真館は地域密着の業態なので、全国規模のSEO対策(検索エンジン内上位表示技術)は一言で言えばオーバースペックになりがちです。ヤフーで「写真館」という言葉で検索して自HPが上位表示されても、閲覧者はぜんぜん違うエリアに在住している方かも知れないのです。


しかし、狙いさえ外さなければ現代においてウェブサイトはほぼすべての業種ビジネスに役立つはずだと考える当社は、このリサーチを元に写真館の方と様々な試行錯誤をWeb上で繰り返してきました。そこでようやくたどり着いた結論らしきもの、それは前項で述べたようなものです。すなわち、

 

「ホームページの中に展示写真ページをつくり、キャッシュポイント(現金商売接点)として日常的に機能させ、かつ、そのHPへの濃いアクセスを実店舗への集客として利用する」

という方向性でした。

 

この考え方を元にテストケースで検証してみました。とある写真館で写真閲覧ページ付きHPをCMS(Jimdo)で構築してみたところ、展示スナップ写真(幼稚園)の売上げが2倍に増加し、それにつれて新規顧客による七五三などのスタジオ撮影依頼も実際に増えました。スナップ写真購入客の中には孫の写真を遠方の祖父母が買うケースや、共働きの両親が夜間などの時間帯にネット上でゆっくり写真を選べるなどの、まさにwebの利点を生かした好意的な意見もありました。逆にクレームは今のところありません。順調に推移しています。

 

今まで展示写真の閲覧といえば、狭い教室の中に短い期間で、しかもごく限られたカット数を貼り出しておくしかありませんでした。閲覧人数も限られてしまうので、効率的な売り方でないのは明らかです。つまり受動的な売り方しかできなかった歯がゆさがあったわけです。しかしこのネット閲覧方式ならかなり能動的な販売が可能です。しかも今までの受動的販売方式よりも写真貼り出しの手間やテストプリントの費用が軽減できます。また、販売テストした写真館の場合、被写体は園児ですから、貴店をお気に召して頂けた場合、同顧客の直近七五三~小学校入学写真~更には(先の話ですが)成人式撮影までつながる好循環が生まれても不思議はありません。その場合、もっとも大変でコストも時間もかかる新規顧客の獲得が非常に容易になります。ここで申し上げるのは、写真館にとって新しいお客さんを見つけるのは、今までのように「待つ」だけでは当然不足だということです。「コスト」と「時間(手間)」の合体概念が必要になってきています。これはチラシを出すとか、新聞広告を打つ、リスティング広告(ネット上での広告のこと)を出稿する、といった対処療法的な話だけではありません。

 

話が脱線してきていますが、最後まで言わせて下さい(笑)。

いうまでもなく写真業とはパーソナルライフに寄り添う商売形態です。その意味からすると先述のように顧客の人生の節目を早い段階(幼稚園児など)で写真の世界になじませるのが肝要です。ひとたびその刷り込みに成功すれば、顧客の人生節目に写真撮影が介在・機能し、多大な感謝を受け、しかも一般小売のように在庫管理や仕入れの負担も少なく、棚卸のような手間も最小限、かつ、お金まで頂けるのです。しかも新技術への投資を怠らなければ、儲けに継続性を出すことが容易です。

 

このように考えれば、ネット界で現在まことしやかに言われてる「ライフログビジネス」などという「新興概念」は、写真館が100年も以前に確立し、連綿と続けてきたビジネス思想と、本質的に差異が無いことに気づかれるでしょう。やや抽象的な言い方ですが、人が人を相手に商いをするとは、人の役に立ったり、人に喜びやハレの記憶を与えるなど、大げさに言えば相手の人生に多くを与え、その結果多くを取り込める業種が、他の業種よりも「勝ち」なのです(卑近な例では携帯電話料金 対 その他のレジャー費など。私たちのケータイ料金にまつわる寛容さは不思議に感じるほどです)。そして写真館や撮影業ほど、この「勝ち」の条件に符合する業界をわたしは知りません。これこそまさに写真館とは、他にほとんど類を見ない、完璧で骨太な業種だと当社で考えている所以です。

業界内では売上げ不振や後継者問題などから写真館の行く末に不安も出ていますが、顧客個人の暮らしに立脚するスタイルである以上、10年かそこらで廃れゆくような安直・脆弱な業界ではありません。写真館ビジネスの優位性・将来性に懸念のある方は、自分たちの商売の本質や原点を業界主導のありきたりな言葉ではなく、今一度よく吟味する必要があると思います(偉そうにすみません)。

 

自店ホームページのコンテンツにこうした思想が息づき、その結果、未来の顧客獲得に向けた前哨基地として、そのサイトがつねに機能するようになればもうしめたものです。写真の展示販売効率化などはその呼び水に過ぎないとさえ申せましょう。そう、ここでも「目的」と「手段」があるのです。

~脱線おしまい~

 

さて、こうしてHP構築の中で一番大切な方向性、コンセプトが固まってきました。こうなれば写真館HPのトップメニューなどの「外枠」の部分は定型テンプレートの当て込みで十分だと思います。オリジナリティはあくまで自店コンテンツこそが核になるべきです。しかもそこを写真閲覧ページにしてしまえばキャッシュポイントに直結することになります。ということであとはそれにあわせてシステムの方を取捨選択していくだけになり、数あるCMS系の中で条件の合う会社・サービスを探す作業と相成りました。その過程を、それこそCMSを使ってウェブサイトにまとめてみたのがCMSサービスまとめサイトというホームページです。よろしければそちらもご覧ください。

■簡単には決められなかったCMSサービス

しかし、この探す作業、程なくして壁に突き当りました。

ウェブ上で物販(いわゆるショッピングカート機能)サイトを自前で構築するというのは、写真業ではなかなか難しいことがわかりました。技術的に、ではありません。

ビジネスモデルとして利益をあげにくいからです。学校やイベントのL判写真である以上、商品単価が100円程度と安く、少量多品種でありながら多売というスタイルになりますがそれではネット商売になりにくい。そんな単純なことでした。

要は採算ラインに乗せるのが難しいのです。

 

しかもそれは売価が安いためだけではありません。最近ではネット小売といえばクレジットカード決済ですが、この方法、実は売価に対しての手数料が割高なことがわかりました。L判1枚100円程度の展示写真販売で手数料は50円くらい払う必要があったりします。それ以外にもちろん商品原価+自分の人件費です。売価1万円くらいの商品ならともかく、これでは自分がビジネスの主体ではなく、クレジットカード会社のために販売しているようなものです。決済方法が多彩になればあとから売上もあがる可能性がありますが、手数料支払いが先にくるのは間違いありません。また、もし多売が実現できたとしても、利益率自体はそれほど改善されないものです。

 

写真館なら知っています。自分たちのもともとのビジネスモデルの利益構造を。サービス業として撮影料の比重が大きく、粗利率が高い(だから中央資本の大手が写真館の全国チェーン展開に参入してきた訳ですね)。しかしネットに打って出るということは大手プリント会社(その多くが市場占有率を上げる為なら採算度外視も厭わない)とも競合するということです。そう考えるとやはり単純なDPE的スタイルはきびしく思えてきました。

一時は安易にもWeb媒体と写真業はなじまないと結論付け、研究をあきらめかけてもいました。

 

ちなみにこうした「ギャップ」に活路を見出し、ネットプリントの傍ら写真館の展示写真販売代行を謳う会社もあります。ラボ機のないお店に対してはプリント代行も行い、自店プリントできるお店には受注システムのソフトのみ販売するという方法です。初期費用だけでなく月次費用もかかりますが決済面ではクレジットカードはもちろん、コンビニ決済など世の中のほとんどの方法が使え、袋詰めはおろか宛名プリントまでやってくれて、お店のすることは宅配便で出すだけ、という、至れり尽くせりなところもあります。インターネットで「展示写真販売」とでも検索すればそうした会社が見つかりますのでご興味おありの方はどうぞ検索してみてください(ただし、写真館が相手ではなく、先生や学校から直接注文をもらうスタイルの会社もありますのでご注意を)。

ネットでの販売戦略で壁に突き当たっていた当社でも、こうした会社のサービスを写真館に勧めることを検討しておりました(今でも)。

 

しかし、こうしたサービスを紹介すると「これはあくまでいわゆる折衷案であり、自店主導の商売スタイルとは言えないのではないか」と話す写真館もありました。たしかに長年、人に頼らず立派にお店を運営してきた独立事業主の皆様ですから、そうお考えになるのも無理からぬ部分があります。そうした方に対してはやはり独立自前のWeb戦略の提案が必要です。こうして依然として暗中模索の毎日が続きました。

 

前頁で説明した「Jimdo」サービスに出会うまでは・・・。